コロナ禍において、感染拡大防止のためにマスクを着用する機会が増えるなど、多くの方がこれまでと異なる生活環境下で夏を過ごしていることかと思われます。
このような中、十分な感染対策を行いつつ、熱中症予防も例年以上に注意していく必要があります。特に今夏において注意が必要なポイントとしては、「作業中のマスク着用」と「換気による室温上昇」の二点になります。
高温多湿の条件下でマスクを着用すると熱がこもりやすくなり、熱中症のリスクを高めてしまいます。
このため、以下の二点に留意しましょう。
●屋外で人と2m以上が確保できる場合にはマスクを外す。
●マスクを着用している場合には、強い負荷の作業は避ける。
屋外では人との距離が確保できるよう、作業は1人で行う、または、複数名で行う場合は持ち場を分担するなど、作業方法の工夫も必要です。
また、十分な対人距離が確保できずにやむなくマスクを着用する場合も、強い作業負荷がかかると熱中症のリスクをより高めてしまいますので、作業負荷の低減ができないか作業方法を検討しましょう。
と、ここまでが熱中症対策との両立に関する一般的な話になるのですが、実際には屋外でなくても熱中症リスクの高い職場は多々あるものと思われます。
私も産業医をしている企業から、このような現場でのマスク着用の是非についてよく相談を受けます。
例えば、建設途中の建屋内(建設業)、入浴介助の場面(介護業)、空調があまり効かない建屋(製造業)など、熱中症リスクは高いものの人との距離が十分に確保しづらい場面などです。
このような場合、「地域の流行状況」「熱中症のリスク」「マスク以外の代替策」などを考慮しながら、感染対策と熱中症対策の優先度を決めていくことが大事です。
建設途中の建屋内を例に考えますと、夏には室温が40℃近くになることもあり、熱中症リスクは極めて高いと言えます。
また、現場には壁などの仕切りが多く、作業者同士の社会的距離は確保しやすい環境にあります。
地域の感染者数が落ち着いている状況下ですと、熱中症のリスクが極めて高いこととマスク以外の代替策があることを考慮し、このような場合は熱中症対策の方により重点を置き、マスク着用を作業者に求めないという判断もできるかと思われます。
また、屋内でも、窓を開けて換気を適宜行うことで室温が上昇、熱中症のリスクを高めてしまいます。このため、換気中はエアコンの温度設定をこまめに調整することで、室温で28℃程度を維持しましょう。
以上のように、今夏においては、「作業中のマスク着用」と「換気による室温上昇」に注意しながら、熱中症対策と感染対策の両立をしていくことが大事です。